ロンドン訪問記 その8 -RAFミュージアム(第二次大戦後)-
第二次大戦が終了すると民間機、軍用機共にジェットの時代に突入します。
英国発のジェット戦闘機です。実戦配備は、世界で初めて実戦配備されたMesserschmitt Me-262に遅れることわずか数週間でした。Meteorはミーティアと読んで流星のこと。
1942年春に機体の試作は完了したものの、搭載予定エンジンのごたごたで計画は大幅に遅れ、予定と違うエンジンを仮搭載してようやく初飛行にこぎつけたのは翌年の春。ところが、加速性能、上昇性能共におそまつで、かつエンジンの軸受強度の問題で機動が±2G程に制限されていたため、戦闘機相手には使えませんでした。要するに、革新性が全く見られない凡庸な飛行機で、その存在価値は連合国側初のジェット機というだけだったそうです。
でも、世の中、何が功を奏するかわからないもので、その凡庸さ故にプロペラ機からの乗員移行が容易で、各国の空軍にもてはやされたのだそうです。また、新しい機器のテストベンチとしても用いられ、ターボプロップを始めとした様々なエンジン、射出座席のテストなどに用いられました。最終的には4,000機近くも生産されたので、工業製品としては成功を収めた機体だったといえるでしょう。
最後はファントムです。独特の形をしています。私淑する佐貫亦男センセーはこの形状を『額に三角紙を張りつけ、かたびらを着た亡者が裾を引いて、両手をぶらり下げた姿』と著書の中で形容しておられます。ちなみに機名のファントムは幽霊のこと。自衛隊の主力戦闘機だったので日本でもおなじみですね。
初飛行は1958年といいますから半世紀以上現役で飛んでいます。活躍の全盛期はベトナム戦争。総生産機数は5,000機以上にのぼり、世界各国で使用されました。RAFでは185機が導入されましたが、1992年には全機退役してしまいました。
日本は154機を調達しました。最初の2機は輸入、次の12機はノックダウン生産、それ以降は全機三菱重工によるライセンス生産です。ライセンス生産が許可されたのは日本だけだったといいます。米英ではすべて退役してしまいましたが、日本ではまだ約50機が運用されていて、百里基地でその姿を見ることができます。とはいえ、F-35の配備が始まったので、2021年頃には全機退役してしまうのだそうです。
以上で、RAFミュージアムはおしまいです。知ったかぶりのウンチクは以下によりました。
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Gloster Meteor F8 |
1942年春に機体の試作は完了したものの、搭載予定エンジンのごたごたで計画は大幅に遅れ、予定と違うエンジンを仮搭載してようやく初飛行にこぎつけたのは翌年の春。ところが、加速性能、上昇性能共におそまつで、かつエンジンの軸受強度の問題で機動が±2G程に制限されていたため、戦闘機相手には使えませんでした。要するに、革新性が全く見られない凡庸な飛行機で、その存在価値は連合国側初のジェット機というだけだったそうです。
でも、世の中、何が功を奏するかわからないもので、その凡庸さ故にプロペラ機からの乗員移行が容易で、各国の空軍にもてはやされたのだそうです。また、新しい機器のテストベンチとしても用いられ、ターボプロップを始めとした様々なエンジン、射出座席のテストなどに用いられました。最終的には4,000機近くも生産されたので、工業製品としては成功を収めた機体だったといえるでしょう。
de Havilland Vampire F3 |
先のミーティアに続く、イギリス2番めのジェット戦闘機です。初期のジェット機は、ジェットエンジンという新しい動力の最適な配置位置を模索して様々な形式が試されました。バンパイアもその一つ。短い胴体後部にエンジンを据え、両翼から後ろに伸びた細いブームの間に水平尾翼を取り付けるという機体形式で、しばらくはこの形式がトレンドとなります。
そこそこの性能で構造が単純、価格も安かったので世界各国が採用し、約3,300機が製造されました。航空自衛隊も1956年に1機購入したそうです。
第二次大戦期前編の最後で紹介したデ・ハビランド モスキートのところで書いた、フレデリック・フォーサイスの『シェパード』でモスキートに救われるバンパイア戦闘機とはこの機のことです。他にも、航空冒険小説の名手、ギャビン・ライアルの『本番台本』に本機が登場します。
English Electric Lightning |
English Electric社は後にイギリスの国策企業BAC(British Aircraft Corporation)に買収されるので、BAC Lightningとも呼ばれます。
ところで、ライトニングというあだ名がつけられた戦闘機は3機あります。最初のはロッキード P-38。第二次大戦で活躍した双発三胴単座の戦闘機です。日本では山本五十六大将搭乗の一式陸攻を撃墜したことで知られています。次が本機。そして最後は自衛隊に配備が始まったロッキード・マーチン F-35。
それにしても、よくもまあこんなへんてこなレイアウトを思いついたものです。上下に並べて前後にずらして配置したエンジン。このおかげで胴体内に燃料タンクを置けなくなって、胴体下部を膨らませて燃料タンクを配置したので、卵を抱えた魚みたいな形になりました。翼形状は、空力学的に不要と考えられている部分をカットしたデルタ翼。尾翼も同じ。異形のジェット戦闘機です。
斜め後ろから見たライトニング。翼の上に取り付けられているのは増槽。増槽のレイアウトまで頑なに他と違います。切り離すときはどうしたんだろう?重い増槽をこんな不安定な取り付け方をしなくてもいいんじゃないかと思いますが、合理的な理由があったんでしょうね。
Avro Vulcan |
冷戦時代、核爆弾を積んでソビエトへ侵攻することを想定して開発された戦略爆撃機。戦闘機みたいなデルタ翼が特徴です。乗員は主脚前に開かれたタラップを登って機内に入ります。幸い本来の目的に使われることはありませんでしたが、1982年のフォークランド紛争では通常爆弾を搭載して出撃します。これが本機唯一の実戦任務となりました。
McDonnell Douglas F-4 Phantom II |
最後はファントムです。独特の形をしています。私淑する佐貫亦男センセーはこの形状を『額に三角紙を張りつけ、かたびらを着た亡者が裾を引いて、両手をぶらり下げた姿』と著書の中で形容しておられます。ちなみに機名のファントムは幽霊のこと。自衛隊の主力戦闘機だったので日本でもおなじみですね。
初飛行は1958年といいますから半世紀以上現役で飛んでいます。活躍の全盛期はベトナム戦争。総生産機数は5,000機以上にのぼり、世界各国で使用されました。RAFでは185機が導入されましたが、1992年には全機退役してしまいました。
日本は154機を調達しました。最初の2機は輸入、次の12機はノックダウン生産、それ以降は全機三菱重工によるライセンス生産です。ライセンス生産が許可されたのは日本だけだったといいます。米英ではすべて退役してしまいましたが、日本ではまだ約50機が運用されていて、百里基地でその姿を見ることができます。とはいえ、F-35の配備が始まったので、2021年頃には全機退役してしまうのだそうです。
以上で、RAFミュージアムはおしまいです。知ったかぶりのウンチクは以下によりました。
- RAFミュージアムの説明パネル
- Wikipedia(日本語版、英語版)
- 『ヒコーキの心』シリーズ、佐貫亦男、光人社NF文庫
- 『飛べヒコーキ』シリーズ、佐貫亦男、光人社NF文庫
- 世界の傑作機 ホーカー・ハリケーン、文林堂
- 世界の傑作機 P-51ムスタング,D型以降、文林堂
- SPITFIRE-FLYING LEGEND-, JOHN DIBBS & TONY HOLMS, Osplay Publishing
- 夜間飛行、サン・テグジュペリ、新潮文庫
- シェパード、フレデリック・フォーサイス、角川文庫
- 単独飛行、ロアルド・ダール、ハヤカワ文庫
- 本番台本、ギャビン・ライアル、ハヤカワ文庫
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