YS-11

先週、「飛行可能なYS-11がヤフオクに出品されていることがネットで話題になっている」とニュースサイトに出ていました。最初は、ふーんという程度の感想だったのですが、ふと、入札する人はいるんだろうかと気になってヤフオクを覗いてみました。

開始価格3,500万円、即決価格5,000万円。単にメカの調子が良いから飛べる、というのではなくて、法的に飛ばせる状態にある(つまり耐空証明がまだ有効)というのがすごいです。

写真をみると、日本エアシステム時代のレインボーカラーの塗装がそのまま。現在はスリランカにあるんだそうです。入札状況は、というと、オークションはすでに終了していました。どんな人が買ったんだろう、と記述をたどっていくと、店頭で売れてしまったとのこと。

面白かったのが問い合わせとその回答。36件の問い合わせには、冷やかし、興味半分、おせっかいといろいろある中で、ガチで購入を考えている方々の専門的な問い合わせが多かったのに少々びっくり。冷やかしを含めてどの質問に対しても出品者の回答が丁寧だったのも印象的でした。

どんな方が購入してこれからどうするんでしょうね。

さて、そのYS-11。戦後初の国産旅客機(装備の多くは外国製ですけど)として開発され、全部で182機が作られました。主に全日空と東亜国内航空(後の日本エアシステム、その後JAL)が昭和40年(1965年)から平成18年(2006年)まで国内線で運行していました。海外にも輸出され、何とアメリカの航空会社でも使われていました。

日本では航空会社の他に航空自衛隊、海上自衛隊、海上保安庁、航空局が使用していました。長らく大事に使われてきましたが老朽化には勝てず、航空局は平成18年(2006年)、海上保安庁と海上自衛隊は平成23年(2011年)に全機退役させ、現在YS-11を運用しているのは航空自衛隊だけとなってしまいました。貴重なその姿は入間基地航空祭で見ることができるようです。

他の機体はどうでしょう。まず、試作1号機。まだ残っています。


YS-11試作1号機(JA8611)

成田にある航空科学博物館で野外展示されています。これは2010年に撮影したものですが、今でも同じ。野外展示というより野ざらしのように見えます。

量産1号機はどうなったのでしょう。2015年以降、一般公開されていないみたいですが、量産1号機(JA8610)は、羽田のANA格納庫にひっそりと保管されているようです。現在の所有は国立科学博物館。なお、同機は、⽇本航空協会が「重要航空遺産」に、⽇本機械学会が「機械遺産」に認定しています。

保管状態はよく、いつでも飛ばせる状態にできるのだそうです。維持管理費用は年間約900万円。残念ながらこの機体は見たことがありません。

[2020/1/31 追記]
量産1号機(JA8610)は、2020年3月にザ・ヒロサワ・シティー(茨城県筑西市)に移転・展示されることになり、2019年9月30日から解体作業が始まったそうです。
詳しくはこちら。
[追記おわり]


以降は自分で撮影することができたYS-11を並べます。

海上自衛隊のYS-11T(6901)

2010年の海上自衛隊下総航空基地祭で撮影したものです。場所は千葉県柏市。この基地はP3C(対潜哨戒機)の訓練基地で、YS-11Tは乗員の訓練用に用いられていました。対潜哨戒機の装備を積んでいるために機内の空調はすべて対潜哨戒装備の冷却に回され、夏場の訓練は乗員、訓練生両方にとって地獄だったそうです。


以下、しばらく2010年の下総航空基地祭で撮影した写真が続きますが、どのYS-11も翌2011年に退役してしまいました。

Rolls-Royce Dart Mark 542-10k


YS-11の心臓です。ロールスロイス・ダート(Dart)は終戦直後の1946年に初運転され、世界で初めて実用されたターボプロップエンジンだそうです。むき出しのエンジンはシロウト目には今でも十分ハイテクの塊に見えます。


YS-11H(6905)、YS-11H(6906)

この日が下総基地に所属するYS-11Hの最後の一般公開となりました。


着陸してエプロンに向かうYS-11H(6905)


この日の飛行展示は大サービスで、こんな着陸も見せてくれました。

うわ!墜落する!

と思いきや、このとおり見事な着陸を見せてくれました。

以上、2010年の下総航空基地祭でのYS-11おしまい。


ANK(エアーニッポン)のYS-11(JA8732)

西武新宿線の航空公園駅(埼玉県所沢市)前に静態展示されているYS-11です。

おしまいは、高松空港で偶然見かけたYS-11。

エアロラボ・インターナショナルのYS-11(N462AL)

見慣れない「N462AL」という登録番号は米国籍機だから。元は国土交通省航空局が保有していた機体(JA8709)を同社が落札・整備の上、高松空港で保管していたものだそうです。この写真は2017年に撮影したものですが、2018年5月に能登半島にある「のと里山空港」に飛行し、同空港に隣接する日本航空大学校で動態展示さることになったそうです。ちなみに、同校では学生の教育訓練用にYS-11を3機保有しています。


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