いきなり、レストア完了後の「Nikkor-S Auto 50mm F1.4」です。
きれいに治りました。半世紀以上前に発売されたレンズなので、新同品とは言えませんが私的には美品です。以下、大雑把なレストアの顛末です。
なお、あくまでも素人が自己責任でやったことなので、この通りにやればうまくいくと保証するものではありませんし、レストアを推奨するものでもありません。どうかご承知おきのほど。
また、バラしていて気がついたのですが、目印と思われるケガキ印が数箇所着いていました。私の手許に来る前にどなたかがバラしたのかもしれないので、そもそも正規に組み立てられた個体ではない可能性があります。
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きれいに治った「Nikkor-S Auto 50mm F1.4」
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矢印の丸サラネジ(3本)を外すとフォーカスリングが外れます。
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矢印のイモネジ(1本)を外してフィルター取り付けリングを左に回すとフィルター取り付けリングが外れます。
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矢印のサラネジ(1本)を外すと、レンズアッセンブリーがごそっと外れます(右側の黒い塊)。 |
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最前面の化粧リング(「NIKKOR-S Auto …」と書いてあるやつ)を外すと前群の前玉が外れます。前玉の後ろのカニメを回すと残りの前群を外すことができます。後群は、後端の直径が小さい部分をねじると外れます。カビは後群のレンズにびっしりと着いていました。作業に熱中していたため、カビの写真を撮るのを失念!
ここまでやって一旦組み上げたのですが、絞りの動作がイマイチスムーズさに欠け、ヘリコイドの動きも心なしかスカスカに思えます。
じゃぁ、やるか。
絞りは、さすがに羽一枚一枚までバラすのが気が引けたので、アルコールじゃぶ漬けにして油分を落とし、「鍵穴のクスリ」という粉末潤滑スプレー(成分は窒化ホウ素)をさっと吹いて動きをなめらかにしました。粉なので、レンズのゴミになるかもしれませんが、自分で使うぶんには、ゴミが出たら拭けばいいや。
さて、次はヘリコイド。 |
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ヘリコイドは、奥に隠れている平ネジ(矢印2本)を外してクルクル回すと抜けます。ヘリコイドは2重なので、内外両方外します。ここで気をつけなけれないけないのがヘリコイドが外れた位置。
ヘリコイドというのは、ネジを多条にして通常のネジ(1条)より回転角あたりの軸方向移動距離を多くするための機構。このNikkorの場合、数えてみたら、5条のネジ溝が切ってありました。ということはネジの噛み合わせ開始位置は5箇所あるということ。これが2重になっているので、組み合わせは25通りあります。うかつに外すと25通りすべてを試すハメになるので、内側外側共にどこで外れたかをマーキングしておきます。 |
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鏡胴右側に2本線でケガいてあるのがヘリコイドが外れた位置の目印(3箇所)。 |
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ヘリコイドグリスは劣化して油カスみたいになっていました。この写真は家庭用洗剤(大掃除で使うやつ)とアルコールで洗浄した後です。
再組み立ての際に使ったグリスはホームセンターで手に入る一般機械用のもの。本来なら専用のヘリコイドグリスを使うべきなのはわかっていますが、なにせ高価。ヘリコイドに用いるグリスに求められる要件は、適度な粘度があること、温度変化に対して粘度が変化しないこと、できるだけ蒸発しないことくらいのものでしょう。普通のグリスでもまあなんとかなるか。あくまでも自己責任。 |
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お化粧もやり直しです。一番目立ったのはフォーカスリングの塗装剥がれとキズ(左側写真)。距離目盛りが彫刻してある部分をマスキングして、手元にあった黒半艶消スプレーを5~6回ぶワァーっと吹きます。一番手に触れるところなので、念の為に1週間位乾燥させました。再組立時は、写真を撮るのも忘れて作業に夢中になってしまいました。 |
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完成したレンズをカメラに取り付けたらこんな感じ。
カメラにはサムレストもつけました。ストラップは、浅草橋の革素材屋さんで手に入れた革紐で自作です。レンズにはスリット付きのレンズフードをつけてみました。構えてみたらやけに前が重い。台所の秤に載せてみたらカメラ(バッテリー、ストラップ他含む)約385gに対してレンズ(マウントアダプター、フィルター、フード含む)が500g。バランスもへったくれもありません。
でもなんだか良く写りそうな気がします。さて、お試しはどこへ行って何を撮ろうかな。 |
ところで、ニコンのウエブサイトに「ニッコール千夜一夜物語」というコラムがあります。ニコンのレンズ設計者が語るマニアックな内容でおすすめです。これの「
第四十四夜」にこのレンズのことが書かれています。
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