ロンドン訪問記 その6 -RAFミュージアム(第二次大戦期 後編)-

バトル・オブ・ブリテンのドイツ側の機も展示されています。


イギリスがスピットファイアなら、ドイツはこれです。Messerschmitt Bf109E。

前編にも書きましたが、各タイプ合わせて約35,000機も生産されました。歴史上、最も多く生産された単座戦闘機です。タイプEのエンジンはダイムラー・ベンツDB601A。スピットファイアのロールスロイス・マーリンと同じ液冷V型12気筒のエンジンですが、エンジンの据え付け方がスピットファイアが正立であるのに対しメッサーシュミットのエンジンは倒立。

倒立は前方視界が良いという利点の反面、プロペラ軸が機軸に対して下に来るので、プロペラが地面に触れないようにするために脚を長くする必要がありました。このため、地上姿勢におけるメッサーシュミットの前方視界は劣悪で、おまけに脚が長いことに起因するトラブルにも悩まされたといいます。

映画『Battle of Britain』で出てくるのはオリジナルのメッサーシュミットではなく、スペインでライセンス生産されたイスパノ HA 1112 Buchón。エンジンもスピットファイアと同じロールスロイス・マーリンです。スペイン空軍で1960年代なかばまで運用されていた機体が映画で使われました。


おそらく英国民が蛇蝎のごとく嫌うであろう爆撃機です。Heinkel He111。

映画『Battle of Britain』では、空襲のシーンで2機のHe111がロンドンの空を飛んだそうです。こちらもオリジナルではなく、スペインでライセンス生産されたCASA 2.111が使われました。スペイン空軍ではパイロットの訓練やパラシュート降下訓練で1973年まで使われていたそうです。

こちらも連合国では悪役ですね。Junkers Ju87G-2 Stuka。
急降下爆撃です。レーダー施設など、ピンポイントの爆撃に用いられましたが運動性の悪さと貧弱な防弾装備のため、制空権が確保できていない状況での昼間の作戦行動は自殺行為だったといいます。この機体は、ほぼ完全な形で現存する2機のうちの1機(もう1機はシカゴ科学産業博物館)。


イギリスが反撃に用いた機体も展示されています。

Avro Lancaster。
Handley Page Halifaxと共に英国を代表する重爆撃機で、ドイツへの夜間爆撃で活躍しました。カナダ生産分を合わせて約7,400機が作られました。現存17機の内2機が未だに飛行可能。1機は英空軍バトル・オブ・ブリテン記念飛行小隊の所属だそうです。


Consolidated B-24 B.VIII Liberator。
米国の軍用機で最大生産機数(かつ歴史上最も多く生産された重爆撃機)を誇るのがこの機体です。約18,000機が作られました。
生産数の多さは、その多目的性にあったといいます。爆撃の他に、海上偵察、対潜哨戒、タンカー、貨客輸送などなど。最大速度、航続距離、爆弾搭載量など、スペックはどれをとっても同時代に活躍したB-17より上。
しかしながら、細長い主翼は被弾すると折れやすいなど、被弾すると弱く、頑丈なB-17であれば生還できた損傷でも未帰還となる場合が少なくなかったそうです。このため、運用側(要するに乗員)の評価は低く、「空飛ぶ棺桶」などの不名誉なあだ名をつけられました。


前編で紹介したP-47と共に、第二次大戦のヨーロッパ戦線で活躍したのがNorth American P-51 Mustang。第二次大戦における最優秀戦闘機と言ってもいいでしょう。
発注したのは英国。頑丈なだけで性能の悪かったCurtiss P-40(前編最初の機体)の代替機を求めて米国を訪問した航空機購買団の要望にNorth American社が応えて試作した機です。同社は契約後、117日で試作機を完成させたといいます。
世界初の層流翼の採用など優れた空力設計で当初から高い性能を発揮しましたが、エンジンをオリジナルの米国製Allison V-1710から高空性能に定評があったRolls-Royce Merlinに換装してから飛躍的に性能が上がります。ヨーロッパ戦線では優れた航続力と高高度性能を生かしボマーエスコート(爆撃機の護衛)として活躍しました。

P-51Dの背後にいる巨大機はBoeing B-17。あだ名はFlying Fortress(空飛ぶ要塞)。
先程のB-24と比べてスペックは劣ったものの、並外れた堅牢性ゆえにエンジンがひとつふたつ停止し、翼や胴体が穴だらけになっても生還できた機体が多数あったといいます。このため、乗員には愛され長く使われました。このあたりは、映画『メンフィス・ベル』に描かれています。この映画には先程のP-51がボマーエスコートとして登場します。


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